不動産取引の基礎知識：特定行政庁とは？

不動産取引の基礎知識：特定行政庁とは？

特定行政庁の定義

– 特定行政庁ってどんなもの？
「特定行政庁」は、都市計画法や建築基準法といった法律に基づき、建築確認や完了検査などの業務を担う地方公共団体のことを指します。簡単に言うと、建物を建てる時や使う時に、法律に基づいて安全性をチェックしたり、許可を出したりする役割を担っています。

では、どんな団体が「特定行政庁」になるのでしょうか？基本的には都道府県や市町村といった地方公共団体ですが、その中でも特に人口が多い都市が該当します。

具体的には、建築基準法によって人口25万人以上の市は、建築主事を置くことが義務付けられています。そして、建築主事を置くこれらの市は、自動的に「特定行政庁」となるのです。

一方、人口が25万人未満の市町村であっても、「特定行政庁」となることは可能です。その場合は、条例で定めることで「特定行政庁」になることができます。つまり、人口は少なくても、都市計画や建築行政に力を入れている市町村は、「特定行政庁」として認められる可能性があるのです。

建築主事の役割

家を建てたり、建物を大きく改修したりする際には、様々な法律に基づいて安全性が確認されなければなりません。この安全確認を行うために、各市町村には建築主事と呼ばれる専門家が配置されています。
建築主事は、建築基準法をはじめとする建築に関する法律に精通しており、建築物の設計図書が法律に適合しているか、火災や地震に対して安全な構造となっているかなどを厳密に審査します。具体的には、建築主は、建築工事が始まる前に提出される建築確認申請書を審査し、法律に適合していることを確認します。
さらに、建築工事が進捗すると、建築現場に赴き、工事が設計図通りに行われているか、使用されている材料が適切かなどをチェックする中間検査を行います。そして、すべての工事が完了した段階では、最終的な検査である完了検査を行い、建築物が安全に使用できる状態であることを確認します。このように、建築主事は、建築工事の最初から最後まで、すべての段階において建物の安全性をチェックする、まさに建築物の安全を守る番人と言えるでしょう。

特定行政庁の主な業務

特定行政庁は、建築確認や完了検査といった建築物の安全性を確認する業務以外にも、多岐にわたる業務を担っています。

建築物の安全確保に関する業務としては、建築基準法に違反する建築物に対する是正命令があります。これは、建築基準法の規定に適合しない建築物に対して、所有者や工事関係者に対して、違反部分を是正するように命じるものです。また、既存不適格建築物に対しても、安全性確保のために是正命令が出されることがあります。既存不適格建築物とは、建築当初は建築基準法に適合していたものの、その後の法改正などにより、現行法では適合しない建築物のことです。これらの建築物に対しては、安全性確保の観点から、段階的に是正していくことが求められます。

また、特定行政庁は、都市計画法に基づき、都市計画に関する業務も行っています。例えば、道路の位置指定や、建築物の用途制限に関する許可などです。道路の位置指定は、都市全体の交通網の整備や、災害時の避難経路の確保などの観点から行われます。一方、建築物の用途制限は、住環境の保護や、都市機能の維持などの観点から、地域ごとに建築物の用途を制限するものです。

このように、特定行政庁は、建築確認や完了検査といった個々の建築物の安全性を確認する業務に加えて、是正命令や都市計画業務を通じて、都市全体の安全で快適な環境形成にも重要な役割を担っています。

特定行政庁と不動産取引の関係

– 特定行政庁と不動産取引の関係不動産取引は、ただ物件の売買を行うだけではなく、そこに住む人々の安全や暮らしを守る上でも非常に重要です。そのため、建築基準法などの法令に基づき、建物の設計や工事の段階から、行政が関与して安全性の確保を図っています。この役割を担うのが、各地域に置かれた特定行政庁です。特定行政庁は、建築基準法に基づき、建築確認や完了検査などの業務を行います。新築や増改築などを行う場合、事前に建築計画が建築基準法に適合しているかどうかを審査する「建築確認」を受ける必要があり、この建築確認を申請する先は、その建物の所在地を管轄する特定行政庁となります。特定行政庁は、申請された建築計画が法令に適合していると認めると、確認済証を発行します。また、工事が完了した建物については、特定行政庁が実際に現場に赴き、図面通りに工事が行われているか、法令に適合した建物であるかなどを検査します。これを「完了検査」と言い、検査に合格すると、検査済証が発行されます。中古物件を購入する場合には、この建築確認済証と検査済証が重要になります。これらの書類を確認することで、購入しようとしている物件が建築基準法に適合しているかを確認できるからです。適合していない物件の場合、安全性に問題がある可能性や、将来的に増改築ができないなどの制約が生じる可能性があります。このように、特定行政庁は不動産取引において、安全な建物の建築を促し、取引の安全性を確保する重要な役割を担っています。そのため、不動産取引を行う際には、特定行政庁の役割を理解しておくことが大切です。

まとめ

– まとめ

私たちの暮らしは、安全で快適であることが求められます。それを実現するために、建築基準法や都市計画法といった様々な法律が定められています。そして、これらの法律に基づいて、私たちの生活空間を守る重要な役割を担っているのが特定行政庁です。

特定行政庁は、建築確認や都市計画など、幅広い業務を通じて、私たちの安全で快適な生活を支えています。例えば、建築確認では、建築物の設計や構造が建築基準法などの法律に適合しているかを厳密にチェックし、安全な建物の建築を許可します。また、都市計画においては、用途地域や建ぺい率などのルールを定めることで、地域の秩序と発展を図っています。

不動産取引を行う際には、これらの特定行政庁の業務と深く関わってきます。建物の安全性を確認する、あるいは土地の利用規制を把握するなど、特定行政庁の業務を理解することは、安全な取引を行う上で欠かせません。

安心して不動産取引を進めるためにも、特定行政庁の役割について、もう一度確認しておきましょう。